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コツセミナー1(西川 正俊 氏): 初期胚発生における細胞の動きについて理解できそうなこと,できなさそうなこと

要旨:多細胞生物のかたち作りにおいて,さまざまな発生運命を持つ細胞が前後・背腹・左右の体軸に沿って正しく配置されていく.体軸の決定は胚の対称性の破れである.これには遺伝子の発現調節や運命決定因子の局在,細胞の力学的相互作用などが複雑にからみ合う.このため,体軸形成の理解を目指す上で数理的なアプローチが本質的な役割を果たす.しかし,性質の異なる複数の細胞が押し合いへし合いをしながら分裂し,かたちを作っていく過程のモデリングは十分すぎるほどに複雑であることもある.本セミナーでは,線虫の体軸形成について実験と理論から理解できそうなこと(背腹軸形成)を紹介して,次に理論的アプローチをあきらめてディープラーニングを使った異なるアプローチで理解しようとしていること(左右軸形成)を紹介したい.

コツセミナー2(木村 暁 氏): 明日から始められる(!?)生きた細胞の顕微鏡観察

要旨:
生命科学において、実験と理論を融合させた研究が重要であることは明白である。理想的には一人の研究者が実験も理論的解析も行うことが望ましい。また、それぞれの専門家が共同研究を行う場合にも、互いのやっていることを少しでも知っておけば、効率的に共同研究が進むだろう。我々実験系研究者にとって、理論的解析への参入には高い壁がある。そして「理論系研究者が実験をする方がよっぽど楽だろう」と信じて疑わないのだが、それはそれで大変なようである。
そこで本セミナーでは、細胞を顕微鏡で観察する際の道のりをゼロから説明し、理論系研究者の方が実験を始める場合のイメージトレーニングとなるようにしたい。例として説明する細胞種は「線虫C. elegansの初期胚」であるが、この細胞はこれまで細胞生物学における理論的コンセプトを多数輩出する際に使われてきた実績のあるものであり、本研究会で講演される西川博士も用いているものである。本セミナーをきっかけに、線虫を用いる理論系研究者が増えてほしいと願っている。
私自身が”今ハマっている”のは、この線虫胚を様々な種類の顕微鏡で観察することであり、本セミナーではそのような画像も見てもらいながら、数理解析につなげる展望も話したい。

コツセミナー3(池田 幸太 氏): 反応拡散モデル駆け込み寺:適用から基礎研究への変遷



要旨:本セミナーでは、講演者が反応拡散方程式系において行ってきた研究テーマから、樟脳船の集団運動に現れる渋滞現象と、ショウジョウバエの体節形成に関わるギャップ遺伝子発現の数理モデルを取り上げ、解析結果について紹介する。講演の前半では樟脳船の集団運動に現れる渋滞現象を取り扱う。樟脳船の渋滞現象は、共同研究者の長山氏らが提唱した数理モデルによって再現されるが、渋滞現象を解析する過程で必要になった縮約モデルの導出方法や、縮約モデルの解析結果について述べる。講演の後半では、Perkinsらが2006年に提唱した反応拡散方程式系を扱い、ショウジョウバエの体節形成に関わるギャップ遺伝子によるパターン形成について論じる。これらは異なるテーマでありながら、パターン形成問題という枠組みに含まれている。特に、数理科学における共通した思想・手法が存在する。本講演では特に、この共通項に着目し、数学的思考法や理論的枠組みについて述べたい。

Tipセミナー :  落合 博(広島大学・JSTさきがけ)

        ゲノム編集技術のおかげで可能になった定量解析、なったあんなこと、こんなこと

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